天使と私と夏休み

待ち合わせの朝のこと

　私が昨日丸一日、聖子さんの下僕として働く隙間の時間で建てた行程表の中で、最初に書き込んだのがこれだ。ドラマなんか見ててもさ、デートの場面とか誘った方が先に来るよね？
　私、間違ってないよね？
　いやいや、不安になってどうする。
　待ち合わせ場所である駅前広場の一角に陣取り、私は今日のプランの最終確認をする。
　まず、十時五分前に海咲ちゃん登場。その後、速やかにホームへ。丁度電車が来るので、それに乗って映画館の最寄り駅まで行く。
　一番早い回でも十三時半からだ。
　なので、先にチケットを引き換えてから昼食に行く。ボリューム満点で味も良いと言う噂のカツ丼屋が映画館の近所にはあるのだ。カツ丼……なんて海咲ちゃんに似合う食べ物だろうか。
　食後、軽く休憩をはさんで映画鑑賞。終わってからはパンケーキが美味くてでかいと噂の喫茶店で感想を言いつつ、海咲ちゃんはパンケーキを食べる。
　それからショッピングして、夕飯。
　健全な時間にお別れ、と。完璧すぎて泣けてくる。
　私としては多少不健全な展開もバッチ来いなのだが、いかんせん相手のあることだ。そもそも、今回が初めてのお出かけであるし、そこらへんは、ねえ？
　不安らしい不安と言えば、移動時間や食事中にどんなことを話せばいいのか、ぐらい。
　お互いの身の上？　最近お気に入りの何か？　学校で、戯れに雑誌で見かけたイケメンアイドルの話を振った時には、全く持って響かなかった。テンピュールの枕を殴った感じ。
「ごめんね」
　とか苦笑いされちゃって、自分を殴りまわしたくなったものよ。
　まあ、食べ物の話が無難なんだろうけど、私がついて行けるかなぁ。不安。