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素敵な母をもって私は三国一の幸せ者だ。
「わかった、貰っとく」
「てゆーか、行けよ? それくれたの、三軒隣りの林さんだからね? 娘がどうしても欲しいっていうから挙げたって言うから。会ったらお礼言うのよ」
正気か、聖子。
聖の字の持つ意味を辞書で引き直し、それに合わせて性格作り変えて来い。
林さんと言えば、ねちっこい事と口が軽いことで有名だ。映画のチケットの事だって、母親に聞くに決まっている。そして、我が母は先ほどの宣言通りに言うだろう。すると、私はチケットも貰ったのにお礼の一つも良いに来ない不出来な娘となるわけだ。
ご近所づきあいの何と面倒な事だろう。それをこんな年端もいかぬ若い娘に押し付けるなんて。母親の愛故に厳しい試練を与えてくれるのかもしれないが、私はぬるま湯が大好きな女子高生だ。そう言うのは余計な気遣いという物。
もういっそ無人島で暮らしたい。もちろん、海咲ちゃんとセットでな。
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