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決死のお誘いのこと
春先に声をかけて以来、私は海咲ちゃんと大いに距離を縮めていた。
なんと、連絡先も夏休み前に交換済みなのである。無料で通話出来たりショートメールとばせたりするあれとか、メールアドレスとか電話番号とか。
私、偉い。
と言うことで、スマホスタンバイ。
ふおお、ゆ、指が震える……。
落ち着け私、友達なら平然とやる行いじゃないか。へい、海咲ちゃん、私と映画でも行かない? そんな感じで良いんだ。良いんだってば。
と言う葛藤を五分ほど繰り返し、ようやく私は海咲ちゃんにメッセージを送った。
そう、例の無料アプリで。
文面はこうだ。
「おっす、おら野乃花」
「なーんか映画のチケット貰っちまった」
「おめぇ、一緒に行かねぇか?」
どうだろうか。
この、ユーモアに富みつつ、端的に用件を伝える感じ。名文と言っていいのじゃないだろうか。
……。
いや、分かってるんだ。
やっちまったよね。
やっちまったよ。
死ね、私。
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