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母娘とソーメンと戦いのこと
用意されていたのはソーメンだった。
レースのカーテンで日差しを遮り、クーラーを効かせた涼しい部屋でソーメンをすする。夏休みの定番すぎて、何と言うか空虚な昼飯だった。
「聖子さん」
「なに?」
ツユの中にすりごまとネギと生姜を入れながら、母親が返事をしてくれる。メンツユから目を離そうとはしない。薬味の加減は娘の話より大切かね。
「さっきのチケットさ」
「うん」
「林さんはなんでくれたの?」
「知らないわよ。いらないからでしょ」
薬味を入れ終えたメンツユにソーメンをつけて食べ始める。
「にしてもさ、別にお母さんと林さん、仲良くないじゃん」
私はとっくに食べ始めている。
ソーメンをすする音が二重奏になった。
「そうでもないわよ。ヨガ教室で一緒だし」
「え、林さん、ヨガやるの?」
林さんと言えば、かなりまるまるとしたおばちゃんだ。あまり体が柔らかいようにも思えない。
「ええ、やってるわよ。まあ、講師の子がお気に入りみたいだけどね」
「ああ、そう言う系」
「そうよ。まあ、何と言うか見ていて愉快だけどね」
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