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意地の悪い笑みを浮かべて言う母親。彼女がこういう言い方をするって事は、心の中でバカにしてるって事だ。どうせ、無様とか滑稽とか思ってるんだろう。
「で?」
今度は私が尋ねられる。
「ん?」
「行くの?」
「ああうん、友達と行く」
「え? 友達って……」
「どうかした?」
「いたんだ……」
つくづく失礼なババアだな。怒りのあまり、ソーメンを乱暴にすすった。デコにツユが飛んだ気がするが、気にする気分になれない。
「いるよ、友達ぐらい」
「へえ。……赤飯でも炊く?」
「いや、いらんよ。てか、何で私が友達いないことになってんの?」
「え? だって、あんた人付き合い下手だし嫌いだし……」
ぐぬぬ。
人がちょっぴり気にしていることを。
「行くからさ、臨時でお小遣いちょうだいよ」
「はあ?」
母親の眉が八の字に歪む。そう来ると思ったけどもさ。でも、引き下がるわけにはいかない。チケットはタダでも、それに付随する諸々の料金。この場合は主に食費が予想されるわけだが。それを自腹で賄うのはまあ辛いところがある。
「チケットタダなのに?」
「ほら、映画館って、いろいろ食べ物とか高いし」
「食べなきゃいいじゃん」
うぐぅ。
「それは無理なんだって。一緒に行く子がね、物凄く食べるの好きなんだから」
「その子だけ食べれば?」
く、正論を畳みかけてきやがって。紅茶か。
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