母娘とソーメンと戦いのこと

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「それはホラ虚しいよ。付き合いってさ、あるじゃん」 「付き合いねぇ。お父さんもそうだけどさ、口を開けば付き合い付き合いってさ。付き合いって言えば金が出るシステムなんてないんだからね」  夫婦間の不満について聞かされても。そう言うのは直接対決して頂けませんでしょうか。 「お願い、お母様」 「おおう、何と言う呼び方をするのよ。背中に怖気が走ったわ……」 「じゃあ母君(ははぎみ)」 「普通に呼んで」 「じゃあ小遣いちょうだい」  刹那、母親が真顔になる。私も負けじと目線をぶつける。飛び散る火花。そのまま食べつくされていくソーメン。涼しい部屋。セミの声。  やがて、ソーメンの入ったガラス鉢が空になった。 「わかったわよ」  そして母親が折れてくれた。 「やった、ありがと」 「てかさ、そんなによく食べるって……。ひょっとして男の子と行くの?」 「違うよ」 「大食いパフォーマー?」 「違うよ」 「ギャル……」 「違うって」  単なるナチュラルラブリー大食い娘だよ。 「ふうん? まあ、節度あるお付き合いをしなさいね」  まだ何か誤解があるような気もするが、面倒なので私は適当に返事をしておいた。
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