恋人の約束。

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車を降りると、 「………。大きなお家。」 (お城みたい。) あまりにも現実味がなくて、ポツリと零れた言葉と思い。今までに見てきた、どんなお家よりも大きくて、綺麗で、花の香りがふんわりと漂ってきて。思わずポーっとしてしまう。 「透子様。」 そんな私を現実に引き戻したのは、彩人さんの声だ。 「此方です。現総帥、ご当主様に、御挨拶ください。」 私は、ギュッと骨壺を抱えて彩人さんの後ろをついて行く。本人と会えば、会って話さえすれば、無かったことにできる話だと思ったからだ。 だって今は、平成だ。自由な結婚が認められている。ただ引っかかるのは、彩人さんの言葉…。 「ご当主様は、透子様のことを存じておられます。」 「透子様も。ご当主様のことを存じておられますよ。」 誰だろう?勿論、知り合いにそんな人はいない。思い当たる人すら浮かばない。 (貴方は…誰?) そうして、辿り着いた扉の前。 「透子様をお連れしました。」 彩人さんの言葉の後、開く扉。そこにいたのは… 「五ノ井…風磨(ふうま)くん?」 先日まで私と同じ学び舎にいた、クラスメイトだった。
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