198人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
車を降りると、
「………。大きなお家。」
(お城みたい。)
あまりにも現実味がなくて、ポツリと零れた言葉と思い。今までに見てきた、どんなお家よりも大きくて、綺麗で、花の香りがふんわりと漂ってきて。思わずポーっとしてしまう。
「透子様。」
そんな私を現実に引き戻したのは、彩人さんの声だ。
「此方です。現総帥、ご当主様に、御挨拶ください。」
私は、ギュッと骨壺を抱えて彩人さんの後ろをついて行く。本人と会えば、会って話さえすれば、無かったことにできる話だと思ったからだ。
だって今は、平成だ。自由な結婚が認められている。ただ引っかかるのは、彩人さんの言葉…。
「ご当主様は、透子様のことを存じておられます。」
「透子様も。ご当主様のことを存じておられますよ。」
誰だろう?勿論、知り合いにそんな人はいない。思い当たる人すら浮かばない。
(貴方は…誰?)
そうして、辿り着いた扉の前。
「透子様をお連れしました。」
彩人さんの言葉の後、開く扉。そこにいたのは…
「五ノ井…風磨(ふうま)くん?」
先日まで私と同じ学び舎にいた、クラスメイトだった。
最初のコメントを投稿しよう!