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「あの~…私のこと、知ってます?」
「は?」
どうやら機嫌を損ねたようだ。綺麗なお顔の眉間に、シワが寄る。声も若干、低くなった。
「星乃透子(ほしの とうこ)。出身地、東京都北区。同い年、十月十日生まれ、天秤座。O型。身長、百五十五センチ。体重「もう大丈夫です!十分です!有り難う御座います!私のこと、よくご存知のようで!」
危なかった。流暢に、女の子の秘密を暴かれるところだった…恐ろしい。本人(わたし)ですら定かではないスリーサイズまで知っていそうだ。
言葉を遮ったからだろうか。五ノ井くんは、また不機嫌そうな面持ちになった。そんなやり取りを見た彩人さんが、私の斜め後ろからクククッと笑みを堪えている。
「風磨様。そんなお顔をされては、透子様が怯えてしまわれますよ。」
「煩いぞ、彩人。」
「………。」
思わず口を閉ざしたところでハッ!とする。私は五ノ井くんに訊かなければ、言わなければいけないことがある。
「五ノ井くん!」
「その呼び方は止めろ。」
「…え?」
「お前も今日から『五ノ井』になるんだ。下の名で呼べ。婚約者殿。」
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