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「ここまで来れば大丈夫かな?うまくいくと良いね。」
「…うん。」
にっこりと笑う朱里ちゃん。私は、足の力を失ったような感覚に陥った。
「朱里ちゃん。私ちょっとお手洗い行ってくるね。」
「うん。ここに居るね。」
個室に入ると、急いでスマートフォンを取り出した。
(とにかく合流しないと!)
しかし、文字をうっている途中でピタリと指が止まった。
「………。」
たーくんが今日、朱里ちゃんと一緒にいられることを楽しみにしていたように。小野田さんだってきっと、たーくんと二人きりになれると思って、今日を楽しみにしてきたんだ。
邪魔して、いいのか?
でも、それじゃあ、たーくんは?
文字を打とうとしている指が、カタカタと震えだした。
どうしよう?たーくんに小野田さんのことを伝える?でもそれは私が言っていいことじゃない。たーくんが朱里ちゃんを好きでいる事実も同様にだ。
「………。」
先生なら…桐山先生なら、どうするだろう。
「………。」
先生なら…きっと。それが、正解では無いとしても。
グッ!と、私はスマートフォンを持つ手に力をこめた。そして、たーくんにあるメッセージを送り、朱里ちゃんの元へと戻った。
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