深夜のテナントビルにて

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ただ万一のことがあるので、警備員が到着するまではそれらしき人物と鉢合わせしない為にも、鍵をかけてその場でじっとしていてくれということでした。 そんなやり取りをしている間にも激しい音は上から響いてきており、私はすっかり怯えきっていました。 とにかく早く警備員が来て欲しい… 不謹慎ではあるけれど、このビルではなくて近くのビルの音が反響しているだけであって欲しいと強く思いながら、入り口からは死角になるパーテーションで仕切られたデスクスペースで息を殺していました。 時間にして三分ほど経った頃でしょうか。 不思議と音がピタっと止んだのです。 一体、何だったんだろうと思いながらも、少しほっとした気分になり、コーヒーでも入れようかとシンクの方へ向かうと 『ガチャガチャ』 心臓が飛び出るかと思いました。 今度は私がいる事務所の入り口を開けようと、扉を触る音が鳴ったのです。 もしかしたら警備会社の人か?とも思ったのですが、合鍵を持たずに来るとも思えませんし、インターホンがありますのでそちらを使うはず… 私は恐怖に駆られながらも、恐る恐るインターホンに備え付けられたカメラで扉の前を確認しました。 …誰の姿もありません。 今しがた音が鳴ったばかりなのですが… 『ガチャ!ガチャガチャ!』 再び扉を開けようとする音。 今度はかなり力任せに。強引にノブを捻る音。     
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