深夜のテナントビルにて

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同僚の話では時々そういった類いの不可思議な現象が起きてるのは知っているとのことで、今まで実害があったことはないので大丈夫のはず、との事でした。 が、正直こんな状況で言われても全く理解が出来ません。 詳しい話を聞き出そうとしたその時でした。 『カタッ…』 …近い。10mあるかないか。 イス?机?が動いたような音。 入り口は開いていないのに、明らかに何かしらの気配が。 何故? どうして中へ? 思考が停止し、まともに呼吸も出来ません。 カツカツと何かしらが歩く音。気配。 何かが…パーテーションを区切りった向こう側に… いる 『ダン!』 パーテーションを殴りつけるような振動。 私は恐怖のあまり、スマホを落としてしまいました。 パーテーションの隙間からスマホが向こう側へと滑っていきます。 落とした衝撃からか通話も切れてしまったようで、同僚の声は途切れてしまいました。 ここに私がいることは気付かれているに違いない。 何かしらの意図を持った、人なのかも怪しい何かがパーテーションの向こうにいる。 私は恐怖でその場から動けませんでした。 しかし…先ほどから感じていた気配がこちらに来るような様子はありません。 静まりかえった事務所に、備え付けの時計の音だけが静かにカチカチと響くばかり。 どれくらいの時間が経過したのか。 私は覚悟を決めて、パーテーションから身を乗り出しました。     
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