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しかしそこには…誰も…
何もいませんでした。
その場を動くなと言われていましたが、もう一秒もこの場に留まることは耐えられません。
落としたスマホを拾いあげ、再度同僚と通話を…
『………れ』
!?
スマホから聞こえたくぐもった声は、良く知る同僚のものではありませんでした。
後日、知った話ですが上階の空きテナントでは従業員と経営者の間で労使にまつわるトラブルがあり、経営者が従業員を誤って殺害してしまったという不幸な事故が以前にあったそうです。
ちなみに上の階は当時の状況そのままに荒れており、実際にあの時に物が動いていたかどうかまではハッキリしないとのことでした。
又、センサーも長期に渡る空きテナントということで、実際には稼働させていなかったという不備が発覚し、警備会社の方からは謝罪と今後の警備を強化する話があったそうです。
私が体感したものが、どこまでが現実のもので、どこからが恐怖によって作り出されたものなのかは今となっては分かりません。
それ以来、誰も残業を含んだ無理な深夜労働をしなくなりました。
結果として、この一件が働き方を健全化させたということになるのでしょうか。
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