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「ーーーっ!」
まずい。目の前で顔を歪める君を見て直感的にそう思った。
いつもの愛らしい笑顔はそこにはなく、俺の言葉に傷つく同い年の君が一人。
彼がぐっと、作った笑みを浮かべた。
「ごめん、用事、思い出したから」
消え入りそうな声だった。
手を伸ばしたが踵を返した君の指すらも、もう捕まえることもできず。待ってと声を上げる前に走り去る君の背を、空虚を握りしめた俺は茫然と見ていた。
(まさか、これで終わり……?)
「あー………やって、しまった………………」
最後の彼の瞳は、遠ざかる小さな背中は、まるで泣いて俺を責めたてているような悲痛さだった。
何だか泣きそうになって俺は必死に上を向くが、目からは水がぽろぽろと落ちていく。
俺の心とは裏腹に、空は青く澄み渡っていた。
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