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「渡、問題できたか?」
「全然だ。秋は?」
「俺もぜーんぜーん!」
はあ、と溜め息が同時に出た。俺と秋は現社が苦手なのだ。
「二人とも大丈夫? 三崎先生はああ見えて厳しいけど」
項垂れた俺達が声のした方を見上げると、馬場が肩を竦めて苦笑した。
「栗先生厳しいのかよ? ホストなのに?」と秋が不思議そうに聞くと「うん」と馬場が頷いた。
「中等部でたまに授業してくれてたんだけど、あまりにも出来ない人にチョーク飛んでいたからね」
ちょんちょん、と眉間を人差し指で叩く馬場。
「うわぁ……」
秋が嫌そうに顔を歪めた。
「馬場は頭いいから、チョークは来なかっただろな」
「そりゃ、まあね」
俺の言葉にふふん、と胸を張る馬場。
「まあ、〝本当に出来ない人〟にだったから、チョークを体験している人はそういないけど。…………というか」
先程とは売って変わって不機嫌そうに眉を潜めた馬場の顔が、ずいっと俺の目の前にやって来た。
「そろそろ名前で呼んでくれないかな。僕達、一応幼馴染み枠だよね」
「枠……」
「あっははは! 枠ってお前!」
ツボに入ったらしい秋が腹を抱える。今度はバンバンと音を立てて机を叩いた。
おいやめろ、周りが迷惑そうにしてるだろ。あと叩いてるの俺の机だぞ。
今だツボから抜け出せないらしい秋の頭を軽く叩くと、動きがピタリと止まった。
「秋……?」
「そうだよな、幼馴染み、枠……だもんな」
秋の身体が小刻みに震え、抑え込んで絞り出したような声が楽しそうに言葉を続けた。
「幼馴染み……枠、ぶふっ」
おい頑張れ。
「幼馴染み、だもんなあ。ふ、お決まりも知ってる仲、だもんなあ」
まさかこいつ、言う気なのだろうか、あの言葉を。
いや確かにお決まりは必ずやるからこそお決まりな訳だが、何もここでやらなくてもいいんじゃないか。流石に馬場が可哀想だ。
ちらりと見るとよく分かっていないらしい馬場ーーーいや、京午が不思議そうに首をかしげた。
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