問1 青く澄み渡る冬を思い出せ。

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「あんなはっちゃけた馬場様初めて見るよ。仲いいんだねぇ」 にやにやと秋と京午のやり取りを見る姿は、とても小悪魔的だ。短時間ながらに目まぐるしく動いていた脳が平静を取り戻し、古和ってモテそうだなっとどこかのBL小説を思い出した。 「当たり前。モテるに決まってるでしょ」 「は?」 少し不機嫌そうに頬を膨らます様は子リスのようでなんとも男受けしそうだ。 ……というか、 「こ、声に出してたか?」 「出してたけど。〝モテそう〟って」 ドキドキと脈打つ心臓を悟られないよう、冷静に見えるよう表面を張り付けた。 「それだけか?」 「それだけだけど……他に何かあるの?」 訝し気に俺を見抜いてくる茶色の瞳にぎくりとして、慌てて手を振った。 「考えてない!」 「ふぅん?」 ならいいけど、と思いの外あっさりと古和はそっぽを向いた。 (セーフ……だよな?) 恐る恐る古和を見るが、彼はもう教科書にのめり込んでいた。初めて見たときからそうだが、もしかしたら古和は教科書が好きなのかもしれない。特に現社。今だって軽く鼻唄を歌いながら、時折ふわふわの茶髪を耳にかけている。 どうやら本当に俺への興味を無くしたらしい。 (古和が気分屋でよかった……) 安堵の溜め息をついていると、予鈴がなった。まだじゃれ合っていたらしい秋と京午がはっとして自分の席へと小走りに向かって行った。 * 冴島 渡 (さえじま わたる) 仲森 秋 (なかもり あき) 馬場 京午 (ばば きょうご) 新月天川学園(にいつき あまかわ がくえん)
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