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駅前の大通りから一本それた裏道。呑み屋の入り口に占いの店はあるという。
こんなことがなければ通ることもなかっただろう。珠理奈はそんなところに自分がいるのを他人事のように感じていた。
「んーー?この辺のはずなのになぁ。」
朱里は携帯見ながら唸っている。珠理奈はイラついた。呑み屋街のすぐちかくのこの場所、放課後という夜と昼の狭間の時間は少しゆっくりしていれば夜になる。
制服姿の自分たちには少し似つかわしくない空気が不快でここに長居はしたくなかった。
「ちょっと、誘ったんならきっちり調べときなよ!」
その苛立ちが言葉にも帯びる。珠理奈は朱里にあたる。
「ごめんって~。」
不安そうに地図アプリをにらんでた顔をあげて、朱里は目を潤ませている。
(いいすぎた……)
最近は感情の起伏に振り回されている。感情に任せて言い聞かせてしまうことが多く、珠理奈は自分でも抑制できないでいた。
謝罪の言葉は喉元まで来ているのに、滑らかに口にはできかった。
気まずい。
いいわけを口にすれば、彼女の涙はこぼれてしまう。
まずは謝罪の言葉をと思うほどに珠理奈の唇は音を発することができなかった。
「まあまあ、二人とも!近くにはあるはずなんだから!」
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