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教室内は荷物をまとめる生徒や帰りの相談をしている生徒で騒がしい。
珠理奈はこの後の自分の行動を考える。放課後はグループで何処かによるのが通例だ。用事で抜けると言わない限り、行かないという選択肢は選べなかった。
珠理奈からしたら、今日は家で一人で勉強をしていたかった。
(中間考査が近い。真紀たちは勉強してなーい!とかって言ってきっちりいい点とってくる。大きく離されると馬鹿にされる。)
そんな考えは真紀たちの声でかき消された。
顔をあげてみれば声をかけてきたのはお調子者の朱里だった。後ろには真紀も控えている。
「珠理奈、今日は占い行ってみない!?」
「え、なにそれ。なんで、急に?」
いつもはファミレスかバーガーショップ、ショッピングモールなどで買い物や食事が終わると惰性の時を過ごし、適当に散りじりに帰るのだ。
それが、急に趣がかわり、珠理奈は戸惑っていた。
「なんかー、駅前の裏路地んとこ当たるらしくて密かに噂になってんの!行ってみようよ!」
朱里はがんがん押してくる。珠理奈は正直、占いに興味はなかった。断る口実を探していると真紀から声がかかった。
「おもしろそうでしょ?いくよね!」
それは最終通告だ。真紀は理由を探して断ろうというこちらの思惑に気がついているのだ。
その上でその機会をなくさせる。
頭がよくて洞察力があるのだろう。
よくこうやって、珠理奈の迷いは真紀の一言によって決した。
真紀の言葉はするっと人の心に入ってくるのだ。珠理奈自身も二言、三言かわすうち真紀の友達という位置にいた。
「うん、いいね。行こう。」
それは諦めの声だった。
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