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ということは簡単な話だ。
この悪逆非道な施設ごと壊してやればよいわぁー! などと魔王のように思ったオレは、丁寧に棒を建物の外に出し、壁を抜けて棒を拾い上げ、建物の屋根よりも高い場所まで移動した。
やはり裏手は病院だった。
今は昼休みなのか、人はいないようだ。
オレにとって好都合だ。
とりあえず病院側の駐車場に降りて、棒を人目につかない場所に隠した。
中を偵察して、オレの目で犯行事実を確かめるのだ。
確かめたあと、この病院から火事でも出れば、すべては公になるだろう。
今のオレには生きていた時よりも荒っぽいチカラがあるからだ。
オレは壁をすり抜け、病室や診療室などを探った。
誰もいない。
手術室と書かれた部屋に、そいつはいた。
ここの医者だろう。
半冷凍の人体を切り刻んでいる。
きっとバイト気分でやっているのだろう。
これで動かぬ証拠は出揃ったので、オレは破壊工作を開始する。
さて、火事か…
火災報知機などは取り付けてあるのかな? などと考えた。
町医者なので施設にそのようなものはないと思ったが、発見した。
どうやら入院設備もあるので必要なのだろう。
オレは相棒を取りにいって、まずはそこに転がっていた車を引き付けた。
きっと、あの医者の物だろう。
見るからにそこそこの高級車だ。
それを大きくかかげた棒に吸い寄せ、一気に病院施設に向けて振り下ろした。
ひどい音がした。
…一体誰が…
オレの仕業だ。
今の衝撃で、火災報知機がけたたましい音と共に鳴り始めた。
うまくスイッチが入ったのだろう。
医者が手術室から飛び出してきた。
彼はもう破滅だ。
まさに彼もそう思ったのか、廊下にひざを落としていた。
オレは今相棒と共に空を飛んでいる。
オレがオレである事を彼女に知らせるために。
彼女にもオレが死んだことが知らされる日が来るはずだ。
そうなる前に彼女に知らせたいのだ。
オレはここにいるよ、と…
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