死神仕事の特別な条件

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「オレが吸引で残骸を持ち上げるから、エッちゃんはヒトがいないか確認して剛力で残骸をあそこまで飛ばしてくれ。そのあとここに堤防を作る。津波の一回くらいならなんとか防げるだろう」  いいモノを見つけた。オレは近くの空き地を吸引で平らにした。そして少し大きめの漁船をそこへ移動し、船底の形に吸引で穴を開けた。 「お前最近、ほんとに器用だな。頼りになる相棒よ!」  オレはこの相棒の魔法の杖にキスをした。 「エッちゃん。この穴に船をゆっくりと入れてくれないか。吸引で支えておくから!」  これで、救助艇を確保できた。もし津波が来てもなんとかなるかもしれない。その前に被害者を収容できれば、そのまま高台へ運べばいい。きっと奇跡が起きたと、明日のニュースは大騒ぎだな、などと思いほくそ笑んだ。    オレ達は地道な作業を進めた。この作業は一向に効率が上がらない。そしてオレは気づいた。 「エッちゃん、魂たちが騒いでないか?」  魂が光を放ち出した。それにつられて、ところどころで命のともし火が灯った。 「死んだ魂が生きた魂を知らせてくれたのか。エッちゃん、急ぐぞ! もう時間がないかも知れない!」  オレは吸引で船を持ち上げている。船底には悦子が船を抱え上げるようにして飛んでいる。 「エッちゃん! もう少しだ、がんばれっ!」 「あたしは平気よ! あと10メートル。ゆっくりと。今足が付いたわ。後は任せて!」     
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