プロローグ

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オレは棒に触れようとした。 またハズレで、『スカッ』なのだろうか。 オレは出てはいないが汗をかいている気分になった。 オレはその棒に触れた。 触れたはずだ。 その途端、『バシッ』とオレの指が弾かれた気がした。 まるで、強い静電気を帯びた物に触れた感覚だ。 掴めなかったが始めて反応があったものだ。 なんとしてももう一度触れなければならない。 かなり痛かったのだが、オレは存在しない手にチカラを込め、棒を握り締めた。 衝撃はないが、オレの手にはビリビリと伝わるものがある。 そうこれは、鉄棒などで手の皮が剥けた赤いその部分に触れた感覚… と言えば少しはわかってもらえるだろう。 ジンジンとするようなそしてそこそこ痛い。 風が吹いても痛いと思う感覚。 まるでそのものだった。 しかしオレは幽体として、物に触れることができた。 まさにこれは、『相棒だ!』などとくだらないことをオレは考えた。 オレはこの『相棒』と共にもといたジュークボックスのある部屋に戻った。 さてこれからどうするか、相棒に尋ねたが答えてくれなかった。 棒、だからな… と自分自身を諌めた。 オレの視界に扉が写り込む。 この身体になる前は気付かなかったが、この先にも部屋があるのかと思い、オレはまた、『スカッ』を体験した。 今度はドアノブだ。 オレは気を取り直し、身体ごと扉と重なった。   部屋の中は小さい作りだ。 ここはなんだろう、何かの準備室か。 やけに狭い。 そして幽体のオレでもわかるような寒気を覚えた。 目の前に温度計があり、『室内温 -30℃』と表示していたからだ。 実際に身体が冷えたわけではない。   さらにオレはその寒そうな部屋に入った。 その途端オレはやってはいけないことをしたのではないのか? と後悔した。 この幽体も凍ってしまうのではないか? という思いだ。 しかしそのようなことは全くなく、暑くも寒くもなかった。
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