光波とあなたの笑顔と

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光波とあなたの笑顔と

この日、私は早番で17時に仕事が終わった。 園内はちょうど電飾が点いたところだった。 一斉に光が広がる、遊園地。 この瞬間が私は一番好きだった。 スタッフ専用の出入り口で、男性が立っているのが見えた。 あれは…片寄さん? 長身だし、スタイルいいから目立っていた。 どうやら誰かを待っているみたいだった。 私はお疲れ様ですと声をかけて横をすり抜けようとすると、 「榊原さん。」と呼び止められた。 「これ…」 片寄さんは、私が貸したタオルを差し出した。 突然なことで、私はたどたどしくそのタオルを受け取ると、 「このあと予定あるか?」 いきなり予定を聞かれた。 「いえ…とくにありませんが。」 「じゃぁ…この後少し付き合って。」 すたすたと歩く片寄さんに、 私はたくさん聞きたいことがあって。 だって、状況が把握できていなかったから。 だけど、あなたは先へ行ってしまうから。 ドキドキして落ち着かない気持ちを抱えながら私もついて行った。 足が長いから、ついていくのが大変だった。 着いた場所は… 「メリーゴーランド?」 まさしくそこは、メリーゴーランドの乗り場だった。 「乗るぞ。」 「え、ちょっと待ってください。」 運よく待ち時間5分。 私たちはすぐに中に案内された。 乗る馬を決め、出発を待っていると、 「ぼくあのお馬さんにのりたいよー。」 あなたが乗っている馬を指さして、子供が泣いていた。 あなたはすぐに馬から降り、子供を抱き上げて乗せてあげていた。 私はこの時初めて、あなたの笑顔を見た。
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