雨揺心

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「あ、片寄さん、お疲れ様です。」 「あぁ、お疲れ。」 ある日、私が事務所の前を通ると、片寄さんが出てきた。 ちょっと顔が赤い気がしたけど。 気のせいかな? 「片寄、もしかしてこの子か?」 片寄さんの後ろから、年配の男性が顔をのぞかせた。 「はじめまして、私は(みなもと)といいます。どうぞ"ゲンさん”と呼んでください。」 片寄さんはこっそり社長さんだと教えてくれた。 「片寄とデートしてくれたみたいだね、ありがと。」 「いえ、社長、あのこちらこそとても楽しかったので、ありがとうございました。」 私は深々と頭を下げた。 「そんなかしこまらなくても。ただのエロいおっさんよ。」 頭を上げると、片寄さんの隣に美しい女性が立っていた。 「大山、ひどいことを言うのー。」 私は記憶の中から大山さんを呼び起こした。 研修の時に講義してもらったし、今もクレーム処理とか担当している偉い人だった。 「片桐は無口だし無愛想だし、つまんなかったでしょ?」 「余計なお世話だ。」 スレンダーで背の高い大山さんは、長身な片寄さんとお似合いだった。
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