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命はお金じゃないと分かっていても、リスクを好んで背負う人は、そう居ない。皆、見なかった事にして、済ませたい。
極論を言えば、未熟児で、病弱で、ダウン症で、障害があると解っている子を産む勇気が有るかどうか。という事。その子の命に責任を持ち、その子の全てに自分の全てを捧げる事が出来るか。という事。
そういった勇気や覚悟や、愛情が有って、始めてこの子を飼う資格が持てる。このペットショップに訪れている人の中に、資格を持っている人は、僕を含めて誰一人として居ない。
どれだけ安くなっても、問題児を抱える事は、出来ない。命に対する責任を、取れない。
「ごめんなぁ」
僕はガラスケースに手を当てて、滲んできた視界を元に戻すために、目を拭う。
そしてゆっくり、綺麗で健康なポメラニアンを見つめ続けている彼女の元へと、歩を進めた。
「カードじゃなくても、ローン組めるんだって」
「そっか、じゃあ、その子にしようか」
「ホントッ! うれしーい!」
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