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僕は動物が好きなのだが、どうやら彼女は僕以上の動物好きらしい。しかし「父親が動物アレルギーで今まで飼えなかった。犬を飼うのが夢だった」と言っており、それが理由で犬を飼う事に賛成したそうだ。
しかし僕は、現実を目の当たりにしていた。犬や猫は、想像以上に高い。
せいぜい十数万円……と思っていたのだが、彼女が一番気に入っている白いポメラニアンは、なんと七十万円もする。僕が生まれて初めて購入した、中古の軽自動車よりも高い。
ガラスに張り付き動かない彼女を「カードの限度額より高い」という言葉を武器になんとか引っ剥がし、他の犬を探す。
犬を見ているのか値段を見ているのか分からない状態の僕の目に、朗報を告げる情報が飛び込んできた。なんと、十万円をギリギリ切る値段の、子犬を発見したのだ。
その子犬はダックスフント。ゴールデンレトリバーを彷彿とさせる薄目の茶色で、艶めいて見えるストレートな毛並みが美しい。シュッと伸びた鼻筋が気品を感じさせ、ちょこんと座った姿が愛らしい、男の子だった。
「この子可愛いよ」
決して「安いよ」とは言い出せないのだが、どうやら僕の言いたい事は彼女に伝わっているらしい。値段を見て「へぇー」と言い、嫌らしい笑みで僕の顔を見つめた。
「……いや、普通に可愛いでしょ?」
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