第2章 オスの鶏がら持ち帰り

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席に着いた途端、 向かい合わせで口喧嘩を始めてしまった二人に、 いつものことだと構わずメニューを開く。 まさに、いつものこの食事会が始まる光景。 こうやって、付かず離れず仲良いのがこの二人なのだ。 美味しそうな海鮮のカルパッチョに目星を付けて、 やっと久助の隣に座るリリを思い出した。 居るか居ないかわからないほど存在感のないリリは、 ただぼうっとテーブルを見つめている。 もうひとつあるメニュー表は通路側に掛ける久助の側にあり、 久助はと言えばまだぎゃあぎゃあ言い合いを続け、 そんなことには気がまわらないようだった。 先に食べたい物を決めてもらおうとメニューを差し出すが、 リリはまた少し目を動かし表紙を見ただけで小さく首を振り、 受け取ろうともしない。 それならお先にと、再度メニューを開いて見ていると、 やっとお互いの不満にひと段落ついたのか、 それとも空腹が勝ったのか、 騒いでいた二人もメニューに手を伸ばす。 今度はメニューの取り合いを始めそうな予感に、 手中の冊子を祉摩へ譲ると、 リリとは真逆に満面の笑みで受取り、 早速と見始めた。
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