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「いや、僕も面白い話のひとつも出来なくてすまないね。
失礼だけど、…声帯的に問題があるとか、
そういうわけではないんだよね?」
「うーん、わかんない。
よく考えてみれば、私もちゃんと声聞いたことないかも」
そして、祉摩のこういうあっけらかんとした所が、
一番好感を持てるところであった。
そのままを受け入れ、
詮索せず、
猜疑心など微塵も持たない。
見習うべき点だと、
まずは疑いと観察から入ってしまう自分をいつも反省させられる。
「お前なぁ、そんな風だといつかぜってー騙されんぞ。
俺様に迷惑かけんなよ。
まぁ、リリちゃんと仲良くなったことは褒めてやるが、
話もしねぇでどうやって友達になったんだよ」
偉そうに喋んな、
とテーブルの下で
祉摩の鋭利なヒールに足を踏まれた久助が悲鳴を上げるのに
少しだけ同情しつつ、
確かに気になるその話を待った。
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