第2章 オスの鶏がら持ち帰り

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祉摩は、リリの顔を伺うように、 珍しく歯切れの悪い説明をする。 「うん、まぁ…。隣人よ。アパートの隣に住んでたの。 楽しくなさそうだったから、 一緒に連れて帰ってきちゃっただけ」 リリは相変わらずで、 自分の話になっても聞いているのかいないのか、 一向に口へ運ばないオリーブをフォークで弄んでいた。 「て、てめぇ、それじゃ人さらいじゃねぇか。 拉致だ拉致。 ちょっと署で詳しく話し聞かせてもらうことになるぞ」 妹を犯罪者扱いした兄はまた足の甲深く天誅を下され、 二回目の悲鳴を上げた。 祉摩は、この話はここまでとばかりに土産の話に戻し、 モダンな赤のネクタイをプレゼントしてくれる。 この土産攻撃も毎回のことなので、 店に来る前に百貨店の雑貨コーナーで 適当に選んでもらったアロマセットを返すと、 海外生活も長いせいか、 少々オーバーリアクションの祉摩はそれこそ泣いて喜んだ。 「十士さん、何でいつも、 今私が欲しいって思ってる物がわかるの?  この疲れた体をこういう香りで癒したいって考えながら 飛行機に乗ってきたの。 大好き。結婚して。私、本気なの」
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