第2章 オスの鶏がら持ち帰り

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軽く酒が入ると必ず始まるこれさえなければと苦笑いで、 今回も百貨店の方の素敵なセレクトだと注釈するが、 祉摩の結婚してくれは一度始まるともう止まらない。 貴方以外は考えられない、 と今夜もそれは延々続く。 腹も満たされたので近くのバーにでも移ろうかと、 冬のイルミネーションの中を歩く間も、 もちろん同じ懇願は繰り返された。 「祉摩、 お前も後最低五十キロ位太れば相手してもらえるんじゃねーか。 俺はこいつの歴代彼女二人を見てきたが、 そりゃあもう見事な…」 ぶ、と言いかけた口を 冷たい視線に慌てて引っ込め、 わざとらしくリリに矛先を変えた久助は、 あえなく無視され祉摩に戻り、 また無視されていた。 テーブル席も開いていたが、 夜景を楽しめるよう窓側に向いたカウンターへ横並びに掛ける。 左隣には当然の如く祉摩、 右には、静かな店内では極力妹と距離を置きたい という兄の賢明な判断もあり、 リリが座った。
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