第2章 オスの鶏がら持ち帰り

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まるで、体温がないのかと思うほど、 グラスに添うリリの手は白い。 近頃はホテルのバーが穴場なのだと、 祉摩に誘導されるまま乗り込んだエレベーターの中で、 他の乗り込み客を避け、 偶然前に立つ形になったリリの、 少し横顔に掛かる長めの前髪とは対照的に 短くぎりぎりまで刈った襟足とハイネックの隙間から覗いた 細すぎるうなじを思い出し、 何故かゾクリとした。 雪女が本当に居たらリリみたいな感じかもなと、 真っ直ぐな黒髪がカウンターのブルーライトに染まり、 紫がかって見えるのにまた目を奪われる。 「ねぇ、十士さんって、 ホントに太った子が好きなの?  祉摩、初耳! ショック!  普通は、細い方が良いもんでしょ? あ、もしかして巨乳好き?  私、おっぱいは結構ある方だよ!」   夜景に夢中だと思ったのか、 祉摩は目の前でひらひらと手を振って注意を自分に向けさせると、 情報の真偽を確かめにきた。
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