第2章 オスの鶏がら持ち帰り

11/18
前へ
/139ページ
次へ
祉摩に気遣わせてしまった気恥ずかしさも手伝い、 酒が増えていた。 気付けば、 同じペースで杯を重ねていた祉摩はべろべろで、 もう呂律が回っていない。 久助の方も、 相手をしてくれないリリとの間を持たすためか、 かなりペースを乱して飲んだようで、 相当出来上がっていた。 リリもそれなりに飲んでいるだろうに、 こちらは顔を赤らめることもなく静かにグラスを傾ける。 「強いんだな。酒」   何となしにそう話しかけると、 初めてちゃんとこっちを見た。 手で容易に掴めてしまいそうな顎先までの小作りさで、 目つきは良くないが どこか目じりの甘いその顔にまたも魅入ってしまう。 久助の言う、リリに感じる儚さというのは、 細い体つきだけじゃなく、 この怪しげな雰囲気そのものなのだとやっと気付いた。 「なに、飲んでる」 そのハスキーな落ち着いた声は リリが喋ったのだと理解できるまで、 三十秒くらいかかっただろうか。 「あ、あぁ、バーボンだよ。君のは?」 マティーニと答え、 リリはそれを飲み干す。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加