第1章 恋する腐れ縁

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いかがわしい場所のベッドに終える変死体の消える相手は 大体水商売の人間で、 無認可の店に在籍するものや、 個人で集客する未成年といった構図がほぼ出来上がっている。 まれに逃走者は平凡な主婦なんて事例もあるが、 そんな尻尾を掴んだところで取り立ててニュースにもならず、 遺族もホテル側も単純な病死での収束を望む。 この連鎖自体が、 またひとつの悲しい事件と言えるなと、 新しい溜息が漏れた。 今回、久助がこんな事件資料を握らされている要因はこれかと、 『頭髪と遺体のDNAは一致せず』という一文に、 もう一度添付写真を見直していると、 今だ春に期待を寄せたままの久助は コーヒーを置いてくれた手でまた拝みだす。 「だからよぉ、祉摩(しま)もお前に会いたがってるし、 今夜一杯付き合ってくれよ。 お前を連れて来るってのが交換条件で、 あいつはリリちゃんを連れて来てくれるって言ってんだ。 リリって名前も良いだろ。 あの子なんていうか、すげぇ儚げでさ、 もうこんな細くて美人だし可愛いし」
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