第1章 恋する腐れ縁

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三十二にもなって、 服の上から想像したボディラインを手で型取り、 夢見がちな顔を加速させている久助は、 これでも警視庁のキャリア組で先陣切って警視に昇進した、 デキる男なのだ。 中学時代は大して親しくもなかったのだが、 同じ高校への合格者が二人のみだったという事もあり、 いつの間にか肩を寄せ合うように言葉を交わし、 腐れ縁とも呼べるものを育んでいた。 学部は違えど大学まで同じで、 流石に社会に出て仕事上まで関わることになるとは どちらも予測していなかった。 犯罪心理学を専攻したのは 単なる思いつきに近い興味だったし、 大学に残ったのも声を掛けてくれた教授が 面白い本を沢山譲ってくれた嬉しさの気紛れだった。 いつの間にか助教授までなれたのは、 久助の持ち込んで来る件を面倒ながら相手していたことも大きい。 久助に言わせれば、 自分がこんなに早く警視にまで成れたのは十士のおかげ、 とのことなので、 持ちつ持たれつ実際多少良い関係が築けているのかもしれない。
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