第1章 恋する腐れ縁

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誰とでもすぐ打ち解けてしまう社交性の高さは 素晴らしいと思うのだが、 久助の一貫性も恒久性も持たない、 むしろ愛情と呼べるかも疑わしいものには、 至極下らない以外の感想が出ない。 「祉摩なんて、身長百八十あんだぜ。ヤバいだろ。 俺より背の高い女なんてありえねぇよ。 あいつには、お前くらいデカいのが丁度いい。 頭半分高いのが理想~って、 祉摩にいつも言われてんじゃんか。 リリちゃんはさ、華奢って表現そのものなんだよ。 まぁ背はそこそこだけど肩とかもこんな薄くてな」 またも手遊びで妄想の中に入ってしまった久助に、 とりあえず先に仕事の話を済まそうと、 事件の詳細説明を求めて声を掛けるが、 うららかな日差しの中をせわしく飛び回る 蛾のように浮き足立った男は、 もうリリ以外に集中できないと愚図る。 「いい加減にしてくれ。 僕はここに恋愛の相談室を開設しているつもりはない。 一度会ったって言っても、 祉摩ちゃんを迎えに行った所で少々挨拶した程度なんだろう。 先入観と思い込みを持ち過ぎた状態で付き合いを始めると、 またその乖離に悩むことになるぞ」
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