第1章 恋する腐れ縁

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第1章 恋する腐れ縁

「これがさぁ、もうマジ可愛いくて、ヤバイんだよ」 「あぁ、昨今の日本語の乱れが 同年代にまで浸透していることに僕も、 ヤバい、現実とやらを感じる」 大学の食堂で、 当然のように自分と同じB定食の唐揚げにかぶりつきながら 高揚気味に話す津田久介(つだきゅうすけ)に、 自国語を正しく使えた方がその子にも印象は良いと思う、 なんて適当に言ってみたのが間違いだった。 学食を出てからも、 正しい日本語とはどういうものか、 意中の者をなびかせる掌握術を教えろ、 などしつこく付きまとわれることになる。 「神様、仏様、十士(とし)様!  俺、今回はホント、マジのマジなんだよ。 どうか迷える子羊に救いの手を!」 「信仰宗教の混合激しい日本人を的確に表した台詞だな」 今日の久助はいつにも増してしぶとく、 どれだけ素っ気なく突き放しても この与太話からまったく本題に入ってこない。 「まったく専門外ってわけじゃないだろ。 ちょっとは一緒に考えてくれよ。 俺がマジでこんだけ頼んでんだからよー、 白鳥(しらとり)助教授様―」
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