第六十二話鬼と虎

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「俺も分かる。馴れ合いで近付いて失う仲間居たしな…。 内輪揉めで殺し合いしてさ」 平助も納得して頷く。 「……俺達が…そうだし…距離が近くて泥沼に入って抜け出せなくなるんだよ」 兼重も頷いて苦笑する。 「……俺達は失う事を恐れているからこそ…」 「距離を置く事で子孫を守りたい」 斎藤と国重も頷いて兼定に言う。 「…なんだよ…そりゃ…昔だって…」 病で衰弱する姿を見て、距離を置いて助けようとした沖田は病死し… 裏切ってでも守ろうとした平助は暗殺され… …最後まで従った斎藤は会津で行方不明に… 震える兼定の脳裏に、かつての記憶が過る。 「距離を置いたから…失ったんじゃねぇのか!?」 思わず兼定は腹の底から叫んだ。 「「…」」 新撰組の皆は黙り込み何も話せなくなる。 「吼えてんじゃねぇか…随分と…刀最年少は威勢が良いぜ」 「っ!?」 後ろから声が聞こえ、兼定が振り返ると… 田貫と加藤が苦笑して立っていた。 「加藤…清正…」 沖田は加藤を見た途端、抜刀体勢になる。 「悪い。聞くつもりは無かったんだが…聞こえたもんでな…」 苦笑して加藤が言うと、兼定の隣に座った。 「殺り合う気はねえよ」 沖田の様子に、田貫は呆れた様に言うと近くの木に身体を預け腕を組む。 「…何の様だ?」 眉間の皺を深く刻み、不愉快そうに土方は清正に問い掛けた。 「……お前らと俺とじゃあ…生きていた時代も違う。 …別に偉そうにお前らと接する気なんて更々ない。 そうだな、強いて言うなら熊本城を造った男の戯れ言だと思って聞け」 土方の殺気に、清正は微笑して目を瞑ると話し出した。
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