第六十二話鬼と虎

3/5
前へ
/857ページ
次へ
太閤秀吉様には、小飼の将が六人いてな。 ねね様と秀吉様には大層可愛がられていた。 けど…秀吉様が亡くなってから狸…徳川と六人の間で対立が起こる。 野心を抱いた狸が天下を奪うため…やること成すこと…図々しくなって来たんだ。 で、勢力の分布図だって徳川と豊臣二つに別れた訳さ。 当然、事態を深刻に見た三人は豊臣を守る為に西軍として… 豊臣を守る為に三人は徳川の東軍に着いて… 天下分け目の決戦…関ヶ原が起きた。 結果は、予め懐柔していた東軍が小早川を裏切らせたお陰で一日と言う短さで決着が着いた。 …西軍が負け逃げた三人や他の将らも処刑され… 残された三人は、豊臣の為に和議の場を設けたが… 狸は邪魔だと思ったらしく… 三人は毒殺され… 「後は知っての通り、大阪城は焼かれ…豊臣家も滅ぼされた」 苦笑して清正は話し終える。 「…だから何が言いたい訳?」 訳が分からない沖田は加藤に問い掛ける。 「…その六人ってのは…敵味方に別れちまったが…全員恋仲だったんだ」 真顔で加藤は沖田に教えた。 「…恋仲…じゃあ…」 「俺達と同じ…」 平助と斎藤は顔を見合わる。 「俺達は…心底惚れ抜いた奴の首を跳ねた。 …それが豊臣を守る手段だと信じてな…」 悲し気な表情で加藤は答えると、空を見上げる。 「「…」」 「「…」」 衝撃を受けた新撰組は皆黙り込む。 「俺達は距離を置いたから惨めな最期を迎えた。 お前らも…それに心当たりがあるなら…下らない意地なんか張ってんな…。 同じ過ちを繰り返して何になる?」 満天の星空を見ながら加藤は問い掛ける。
/857ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加