第六十二話鬼と虎

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「……人間って今も昔も馬鹿なのは変わりないよね。 …信念とか…意地とか…張ってさ…」 爪紅を自然乾燥させながら、加州は誰に言う訳もなく言う。 「命は一つだけ…あの子に会える機会を見逃そうとしてるしね」 頬杖をついて安定もポツリと言葉を繋げた。 「「「「…」」」」 思い当たる皆は、目を見開いた後… 「刀の癖に生意気!」 ゴンッ ゴンッ キレた沖田は、安定と加州に拳骨を落とした。 「っ…だって…皆…加藤さんに言われて図星だったじゃん…あの子は普通の人間だし…」 涙目で加州は沖田に文句を言うと… 「…僕達のさ…感化された訳じゃないけど…兼さんの事も考えてさ…素直になるべきだと思ってさ」 安定も加州に頷く。 「…確かに…あの子は…人間。僕達は人間じゃなくなったから年取る事は無いけど…あの子の時間は数限り無い。頭では分かってるけど…だけど…」 辛そうに沖田は言い掛けるが… 「馴れ合う事が怖くて逃げてちゃ駄目だよな…会いたいと思って俺達は二度と会えなくなった」 沖田の肩に手を乗せ、土方は決心した表情になる。 「土方さん」 土方の言葉を聞いて沖田は泣きそうな顔になった。 「逃げてちゃいけねえしな!」 「…うむ」 平助と斎藤も頷く。 「…まあ…お前らが言うなら…」 「馴れ合いは苦手だが努力しよう」 兼重と国重は苦笑して、顔を見合わせて頷いた。 「…へへっ!虎狩りの清正公も中々良いこと言うじゃねえか!」 嬉しそうに笑って兼定は頷く。 「…そうだね。僕達も見習わないと行けないよね。…兼さん…」 兼定に言われ、堀川も納得して頷いた。 ……遠い昔、京に太閤殿下の子飼いの将が六人程… 昇進し、要職に着いた記念に刀を買うために刀屋に来た。 清正公と、ある人が喧嘩しながら仲良さそうに刀を選んでいるのを見たことがある。 僕は選ばれなかったけど、恐らくあの人が清正公の大切な人。 堀川は過去を振り思い出した。
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