第六十三話馬鹿だから馬鹿なんだ

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後ろ髪が少し長く、緑色の旅装姿の青年は… 手首にはめたカラクリ…ブレスレット型通信機を見詰め難しい顔をしていた。 石田三成。あだ名は佐吉。 元豊臣家五代家老家老の一人で関ヶ原を引き起こした西軍の総大将。 丘の上に敷いた豊臣軍の陣内で、人払いを済ませた後、ずっとブレスレットとにらみ合っていた。 「…失礼しますよって…石田殿…ってまた貴方…通信機とにらめっこしてんですか?」 黒髪で短髪、頭にバンダナを巻き、行商人の格好をした青年が呆れた顔をする。 島左近。 石田三成の軍師で、関ヶ原で討死した。 生前の若い頃までは、流浪の武将だったが、太閤秀吉に支える石田三成を気に入り仕官する。 「べっ別に私は…」 島に言われ、石田は冷や汗を掻くと目を背けた。 「そうですか?別に俺は構いはしませんが…あっ、そうそう…前田慶次から聞いたんですがね? …最近、加藤さんから視線が気になるって言ってましたよ」 思い出したように、島は顎に手を当て石田に言う。 「なっ…何?」 島から聞いて、石田は慌てて振り返った。 「石田殿があまりにも連れない態度を取るんで、石田殿から前田慶次に鞍替えしたかも知れないですね」 笑って他人事の様に島は石田に答えた。 「…そんな訳無いだろう…前田慶次は女好きだ」 冷や汗を掻いて石田は首を振り否定する。 「どうですかね?田貫は紅蓮に惚れているのは周知の事実。 刀剣と持ち主が似るのも仕方無いんじゃ無いですか?」 楽しそうに笑って島は石田に近付く。 「っ…竹中様が戻られてない…左近!悪いが陣を任せる!」 「承知しましたよ」 慌てて石田は島に命令すると、日向が居る幕舎へ向かって走り去って行った。 「日向っ!!」 「おや?主…どうかしたか?」 幕舎で馬の世話をしていると、石田に声を掛けられ少年はびっくりする。 銀色の髪、黒い軍服を着た可愛らしい少年。 日向正宗。 石田三成の短刀の刀剣で、趣味は梅干し作り。 温厚だが、戦は嫌いじゃない。
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