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…確か…竹中様には待機するようにと命令を受けていた筈だけど…
…まさか…また左近が石田殿に妙な事でも?
再び馬に乗ると、霧時雨は陣へ駆けて行った。
暫くして、陣に戻ると幕舎に入り…馬の世話係に馬を預け…
…左近…左近…いたいた…
陣幕の中を霧時雨は左近を探し、他の武将や兵に聞きながら歩き回り…
作戦室にいる左近をやっと見つけた。
「左近!」
石田の事が気になり、霧時雨は堪らず島を叫ぶと駆け寄る。
「霧時雨?どうしたんだ?そんなに慌てて…」
山賊の拠点を記した地図を見ながら、何かを考えていた島は霧時雨に呼ばれ振り返った。
「慌てた様子で殿が日向と共に馬で駆けて行ったが…左近、お前また殿に何か吹き込んだか?」
怪訝そうに霧時雨は島に問い掛ける。
「…あぁ…それだったら問題ない。すなおにならない狐に、俺がちょっと背中を押しただけだからな」
笑って島は霧時雨に答えた。
「背中を押したって…また変な事を言ったんじゃないだろうな?」
腕を組んで霧時雨は目を細める。
「俺ってそんなに信用ないか?心外だな…」
苦情して島は肩を落とす。
「…まあ…良いけど…報告だ。麓の村は誰一人避難するのを拒んだ。
戦国だったら必ず避難する所だが…やはり平和ボケした江戸だからだろう。
命の危険性を理解していないばかりか…状況判断するのも出来ないらしい」
真顔で霧時雨は島に報告した。
「…竹中様と俺が予測していた展開だ。…江戸時代は…平和な時代…だから戦乱を知らない。
…薩摩と島津に…幕府が負けたのも…狩り慣れている狼と…お上品なトイプードル…闘わせりゃ勝ち負けは一目瞭然…」
苦笑して島は頭を掻く。
「…どうする?策を中止し別な策でも用意するか?」
目を細め霧時雨は島に問い掛ける。
「いや、最後にもう一つ…取っておきの策がある。
だが、その策には藤堂殿、大谷殿、小西殿、福島殿…天下分け目の合戦で死闘した恋仲軍団を使わなきゃ行けなくてね」
苦笑いして島はぼやいた。
「給料減給されるな…石田様に…」
「いや、もしかして只働きさせられるかもな」
霧時雨が目を細め言うと、島は肩を落とすのだった。
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