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第六十五話闇将と六合
俺が仕え始めた時に…秀吉の元に軍師が居た。
神子田正治。
信長の家臣から秀吉の家臣になったらしく…
何考えているか…正直理解に苦しんだよ。
謀略を巡らせ、死ぬ敵を見て神子田は笑っていた。
知略とは本来…いかに犠牲を出さずに城を落とすか、戦で勝つかなのにさ。
その後、官兵衛さんも信長の家臣から秀吉の家臣になった。
市と長政も結婚した頃…神子田は頻繁に近江に行くようになったんだ。
かと思えば…神子田は信長にも秀吉に無断で謁見しては朝倉攻めを進言していた。
俺と官兵衛さんは止めた。
朝倉を攻めれば、古来より親交が厚い浅井が謀反を起こす可能性があったから…
俺達の願いは届かず、織田は朝倉を攻め…浅井は反旗を翻した。
予想していた俺達は、秀吉と共に撤退する織田軍の後方を守る殿を務め…
命からがら京へ逃げ体勢を立て直し…朝倉、浅井を滅ぼした。
「崩れ落ちる小谷城を見て神子田は笑っていた。
だからすぐに理解したよ。あんたに謀反を促したのは…神子田だろ?」
笑って竹中は浅井に尋ねた。
「っ!」
図星を言われ、浅井は唇を噛み締める。
「神子田は…位が低い秀吉を乗し上がらせる為…あんたを利用して…市を不幸にさせる事で…秀吉を信長の重臣に押し上げたんだよ」
虚空を見詰め、悔しそうに竹中は浅井に言い放つ。
「…某は…神子田に…事前から聞いていた。織田が朝倉を討つから…助けたければ謀反を起こした方が良いと…」
ガクンッと膝をついて浅井は目を見開く。
「やっぱり…予想通り…。俺も…あの後嵌められてさ…官兵衛さんが説得に言った荒木政重に捕まって…さ」
竹中は拳を握りしめると…眉間に皺を寄せ…
「帰りが遅い官兵衛さんを謀反だと決め付けた信長に…その子の首を差し出せと言われて…」
絞り出す声は震え…
「親友の子を殺せない俺は…身代わりとして自分の子を殺し…その首を差し出した。
最低な親だよ…俺はさ…」
泣きそうな顔をして竹中は独白し…
「…竹中…」
浅井は竹中の気持ちを考え悲痛な表情になる。
「それからだよ…官兵衛さんが足を悪くしながら戻るまで…その軍師に神子田が笑いながらずっと就いていた。
多分、荒木政重の謀反も神子田の仕業だろうね。
信長に首を差し出せるように進言したのも神子田だよ」
浅井を見据え竹中は淡々と言う。
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