第六十五話闇将と六合

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「水戸を叩くか…直接愛奈を狙うか…どちからだな。 …今の所は愛奈を刀剣や先人に任せるしかないが…豊臣も動いているらしい。 …何とかやり仰せるだろう…」 酒屋を営む美しい青年も、思考を巡らしながら頷く。 「問題は六合と家康様を引き離せるか…だ。 家康様は六合に喰われはしたが…三十六神将の一人…未だに自我を保っていたらお救い出来る筈…。 家康様には恩がある。長政様が討たれた後から俺を召し抱えてくれた。 …聞けば、新撰組に俺の子孫が居たと聞く。 刀で名を残せただけでも、武士としての本分が通ったからこそだ」 美しい青年の隣で、気難しい表情の青年も頷く。 「…なればこそ。四方に散らばる戦力を一つに集結させ事に当たらねばなるまい。 …愛奈の元には半兵衛と左近、三成、清正、慶次が居る。 …ましてや、愛奈には源氏の名主や、名だたる伊達と豊臣の刀剣、新撰組が居るとか…」 話を聞いていた端の席に座る青年が淡々と話す。 「しかし…果たして上手く言葉が運ぶでしょうか? …世は幕末…様々な理念が渦巻く時代でもあります。 新撰組が賛同するとは限りません」 手前に座っていた青年が立ち上がり、困惑しながら意見する。 「新撰組の主要幹部は、幕府に恩がある多摩村出身だとか…取り分け忠義心も厚いと聞く。 …家康や吉宗の名を出せば自ずと賛同せざるを得んだろう」 無表情で青年は動揺する事無く言ってのけた。 「っ…」 二の句が告げず、目を見開いて青年は固まる。 「そなたは…難しく考えすぎだ。頭は良いが弟の幸村と違って速断即決に欠けている。 少しは弟に見習うのだな…」 立ち上がると、青年は酒屋から出て行った。 人通りの無い夜道を歩きながら、青年は夜空を見上げると… 「半兵衛は無理する傾向にある。…目附役として島に行かせたから大丈夫だと思うが…。 …長政が笠間で忠興殿と呉服屋を営んで居たな。 顔だけでも出して置こうか…」 青年は呟くと、呉服屋を目指して歩いて行くのだった。
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