第六十六話参ろうか?兄者殿?

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高次の記憶には、籠手切江を飾り、飲み会の席で自慢していた忠興の姿。 「これでも脇差ですっ!下積みの為ならば…刀剣として闘いましょう!」 冷や汗を掻いて、江は高次に答えた。 「下積み…何の?」 「…触れないでくれるかな…。本人は…どうにもアイドルを目指して居る様でね」 キョトンとして高次が聞くと、苦笑いして歌仙は答えた。 「あいどる?なんだそれは…」 訳が分からない頼光は首を傾ける。 「食い物か?」 笑って岩徹は山賊と対峙しながら興味津々になる。 「……刀がアイドル…だと?」 意味が分かる膝丸は眉を潜めた。 「歌って踊る…そう、ステージに立って僕はスポットライトを浴びるんです!」 キラキラ目を輝かせ、江は脇差しを握る。 「大丈夫なのですか?この子…」 「…夢見るだけなら雅じゃないが、タダで済むだろうね」 心配して高次が聞くと、歌仙が溜め息をついた。 「さて…蹴散らすよ」 「はい!」 笑って歌仙か言うと、高次も頷き山賊に向かって斬りかかるのだった。 同じ頃… 「どう見ても…まともにやり合えば…愛奈は失うし、刀剣だって折れて俺達の敗北は免れない」 山賊の拠点を一望出来る丘に、清正は佇み腕を組む。 「…けど、関ヶ原で島津が徳川本陣突破した見たいに…俺達が突っ込めば逃げる時間は稼げるだろうよ?」 笑って田貫は鞘から打刀を引き抜く。 「島津豊久見たいに時間を稼げばな…。明らかに自爆行為だが…愛奈が居る手前…背に変えられない…」 難しい顔をして清正も頷く。 「時間稼ぎなら俺達も混ぜてくれないかね?」 「長谷堂で伊達と最上相手に殿を務めたんだ。 自爆行為にはさせないと思うが…?」 「「!?」」 後ろから声が聞こえ、清正と田貫は振り返る。 そこには、慶次と紅蓮が佇んでいた。 「あんたより先に…此所にいたんだが…会話が聞こえてしまったんだ。 盗み聞きする悪い癖なんざ…持ち合わせちゃ居ないんだがね…」 困った顔をして慶次は首を傾ける。 「聞いてしまったら開き直るしかない。…死ぬつもりなんて一ミリも無いけど…これも戦の華。 散らせないように大暴れと行こうか!」 楽しそうに紅蓮は槍を構えた。 「…好きにしろ」 苦笑して清正は背を向ける。 「…っ…知らねぇ!勝手にしやがれ!」 紅蓮に田貫は何か言いたそうにしたが、怒りで顔を真っ赤にさせ清正と共に走り去る。
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