第六十六話参ろうか?兄者殿?

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「おや?田貫は相変わらず難儀な性格してるねぇ…」 楽しそうに慶次は笑って走り出す。 「難儀も難儀だよ。想いに答えられないからね」 困った顔をして紅蓮も追い掛け走り去る。 同じ頃… 「ん?青江何処に行くんだい?」 急に立ち上がった青江に、石切丸は声を掛ける。 「うんうん…懐かしい戦の匂いがするんだ。 きっと高次は闘っている。僕も行かなきゃいけなくてね…」 苦笑して青江は石切丸に答える。 「何だって?」 青江から聞いて石切丸は驚愕する。 「先程から高次達、細川殿や刀剣達も戻らない。 いや、戻れない事情があるとすれば…闘っていると考えておかしくないよ」 笑って青江は答えると目を細めた。 「…確かに…だとすれば辻褄が合う」 険しい顔付きで石切丸は頷く。 「僕は高次の元へ向かう。君は皆に知らせてほしい。 …竹中達が戻れば…すぐに策を講じてくれるだろうからね」 真っ直ぐ見据え青江は石切丸に頼む。 「分かった。青江、気を付けて行っておいで」 頷くと、石切丸は心配そうに青江に言う。 「僕は戦国に使われていた実戦刀だよ?心配いらないさ。 また会おう、石切丸」 笑って青江は石切丸に答えると、機動力を生かして走り抜けて行くのだった。 「…青江…」 石切丸は小さくなる青江の背中を心配そうに見詰めていた。 一方…山賊の拠点が見渡せる一本木の丘の上では… 「待ちに待った主と…信長様に会いに来ただけなのに…何故豊臣軍と山賊が? …おかしいね。本来の事実ならこれ程大きく無い筈だよ…。 …嫌だなぁ…僕は…今は刀剣なのに…豊臣の動きは不自然だし…あぁ…闘いたくないのに…」 溜め息をつくと、眼鏡を掛けた青年は座り込む。 「父上、細川家から聞いた筈ですよ。忠興殿は幕末の此方に居ると…。 戦国の世で首を長くして待っている玉に早く会わせてやらないと…父上が酷い目に合うだけかと…。 今は刀剣かも知れませんが、明智一族の家長として情けない姿は見たくありません」 そんな青年の隣に、長身の青年が溜め息をついて嗜める。 「玉に怒られるのは嫌だなぁ…。どうせ怒られるなら愛奈と信長様が良いよ」 嫌そうな顔をした後、眼鏡は腕を組みドヤ顔する。 「何ですか?その変な拘りは…父上のせいで私は安土で恥を掻いたのですよ。 変な性癖は早く治して頂きたいです。」
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