第六十六話参ろうか?兄者殿?

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心底嫌そうな顔をした青年は眼鏡に苦言を呈した。 「分かっているさ。…今は亀甲貞宗なのに…また昔の名に戻るとは最悪だよ。 …なんで僕は刀と同化しちゃったのかな?」 「……明実がプレイしていた仮想ゲームは元々…他の亀甲貞宗も居ました。 たまたま、世界が歪んだ時に父上と主難民だった亀甲貞宗が波長もピッタリ合って同化されたのかと…。 それと、明実は江戸ステージも最初しか攻略して居ませんし、父上を入手して居りませんよ」 ボヤク眼鏡に、青年はキッパリ事実を述べる。 「つまり…僕が曰く付きのゲームキャラになった訳?」 苦笑して眼鏡が首を傾けると… 「…最初はゲームキャラだったかも知れませんが…平成の時代でも幽霊は電波を解して拡散すると聞き及んでいます。 父上は元々手持ちだった刀剣に親近感を感じて同化されたのでしょう」 目を細め青年は眼鏡に言う。 「…親近感…ねぇ。本体は美術館にあるし…この姿は作り物…。 …それでも人の姿に戻れたのには違いはないけど…。 何だかなぁ…生前の僕は変な性癖はなかった筈なんだけど…ね」 苦笑いして眼鏡は頭を掻く。 「…元々亀甲貞宗は…ドMキャラの様ですね。 …恥ずかしいですが、父上には頑張って頂きます」 嫌そうな顔をして青年は眼鏡にエールを送るが… 「…恥ずかしい恥ずかしい言うのやめてくれよ。 僕は僕で恥ずかしいんだから…そうだ…愛奈と信長様の元へ行く前に僕の身体でも見るかい? 服の下…滅茶苦茶凄いんだよ?男の変な格好が現代の子なんか好きなのかな?」 笑って眼鏡は青年に近寄る。 「元々ゲームの世界が、何らかの力で偉人や英雄の魂を呼び寄せ独立し実体化したのは紛れもない真実。 最近の子の好きな要素とかは…時代ごとに変わるので分かりませんよ。 って言うか…父上…全力で近付かないで頂きたいです。 …ただでさえ…見苦しい格好をしていて…母上にも諌められたのに…まだ懲りないのですか?」 後退りながら青年は眼鏡に問い掛ける。 「…え?なんか楽しそうじゃない…煕子も滅茶苦茶怒っていたけど…面白いと思うよ? 多分僕の刀剣のイメージが亀甲だからダジャレかも知れないけど…」 笑って眼鏡は首を傾けた。 「私は全然面白くなどありません…気色悪い…見苦しい…面汚し…明智家の恥です」 真顔で青年は眼鏡に言い切った。
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