第六十六話参ろうか?兄者殿?

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「親を恥だと言うような教育をした覚えなんて無いんだけどな? 酷いよ…僕かなりショック…」 落ち込んで眼鏡は膝をつく。 「服の下の変な縄を取れば済む話では? 母上にも玉にも散々言われた挙げ句に縄を取らない…父上の方がおかしいですよ」 幻滅して青年は眼鏡を睨み付けた。 「…だって…変な格好なんて生前真面目第一主義だったからさ…。 あの頃は変わり者好きな信長様を理解する事は出来なかったけど…今なら理解出来る気がするんだ」 頬をピンク色にさせ、眼鏡は照れながら言う。 …うわぁ…何…このオッサン…私にもあんな変態な血が受け継がれているのかッ! 全力で否定したい!!私はまとも!! ドン引きして、青年はふらついて青ざめる。 ガサガサッ 「ん?」 「?」 背後の繁みから、誰かが出て来て眼鏡と青年は目を丸くする。 シュッ 高く跳躍すると、完全に出てくる前に眼鏡と青年は木に飛び移った。 「あれ?今声がしたんですけど…気のせいですかね?」 出てきたのは、旅装姿が似つかわしくない子犬の様な青年だった。 「あれ?…元親君の所へお邪魔した時に見た事ある…確か島津の…」 下を見下ろしながら、眼鏡は青年を見て呟く。 「島津豊久…ですね。 …清正の話によれば…関ヶ原で叔父である義弘を逃がすため…徳川本陣に突っ込み壮絶な最期を遂げた猛者らしいですよ。 父上が長曽我部の救援に駆けつけた時も…幾度か刃を交えた事もありましたでしょう?」 小声で眼鏡に耳打ちし、豊久の事を話す。 「そう言えば…やけにキャンキャン吠える子犬が居たよね。 明智軍の鉄砲隊が一斉射撃したら退却したけど…あの戦でも若者ながら元親君が居る本陣前まで迫ったし… 嫌な汗掻いちゃうし、指揮を取っていた僕でさえ焦ったよ」 思い出して眼鏡も頷く。 「…気のせいか…とにかく早く加勢に行かないと…っ!チェストフルパワーで行くぞ!」 豊久は叫ぶと走り出す。 「加勢?何のだろう?もしかして愛奈と信長様が危ういのかな?」 「とにかく尾行して見ましょうっ!」 顔を見合わせると、眼鏡と青年は木から飛び降りて豊久の後を追い掛けるのだった。
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