第六十七話焔の中の真の黒幕

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『…これしか…市を守れる策がないんだ…』 今にでも泣きそうな表情で竹中は黒田に言い返した。 『半兵衛…』 竹中の気持ちを考え…黒田はそれ以上何も言えなくなる。 笠間の城下町… …昔を今頃感慨に更けるように思い出すとは私らしくもない… 夜道を歩きながら、黒田は苦笑する。 …私が引き止めてさえ居れば… 半兵衛も市も死なずに済んだ…全ては私が招いた失態だ… 後悔していると、黒田の目に… 「あれ?如水様っ!?」 店先の看板を片付けていた乱が黒田に気づく。 「…長政は居るか?」 乱に近付くと、黒田は乱に問い掛ける。 「長政様はいらっしゃいますが…また体調を崩されてしまい…今先に寝ておられます」 申し訳なさそうに乱は黒田に答えた。 「…左様か。元々あいつは身体が丈夫な方では無かったからな」 乱から聞いて黒田も苦笑する。 「邪魔をしたな。長政には私が来たことは黙っておいてくれ」 背を向けると、黒田は乱に言う。 「お待ちください…如水様っ!!」 走って乱は黒田に駆け寄る。 「…何だ?」 不思議そうに黒田は乱に振り返った。 「開いてる部屋ならいくらでも御座います。 …せっかくいらして下さいましたのに…御帰しする事なんて出来ません…。 如水様は多忙で御座いましょう? それなのに来て下されたのですから…きっとお会いしたら長政様も喜びます」 乱は一生懸命に黒田を引き止める。 「…そこまで知っていて私を引き止めるとは…刀剣と言えど、粟田口の短刀は教養も礼儀も弁えていると見える。 …良かろう。朝には帰らんとならぬが…一晩泊めて貰うとしようか」 観念して黒田は乱の言葉に甘える事にした。 「承知致しました!直ぐに部屋を御用意致しますので、申し訳ありませんが…店先でお待ちくださいっ!」 嬉しそうに乱は返事をすると、黒田に頼み店先に入らせると… 黒田の返事を待たずに奥へ走り去って行った。 「…うーむ。前言撤回だ。粟田口はそそっかしいな…」 目を細め、黒田は溜め息をついて呟く。 「これは御隠居様っ!お久しぶりですばいっ!!」 風呂上がりなのか、浴衣姿で濡れた髪をタオルで拭きながら博多が駆け寄って来た。
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