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「…博多か。小夜から文を貰ったぞ。
よもや毛利と長曽我部の件に…吉宗様まで巻き込まれるとはな…」
博多に黒田は苦笑して言うと、背を向け近くにあった椅子に座る。
「…面目無いですたい…吉宗様は生前から自由を好む方…もっと上手く俺も気を付けていたら防げていた事案ばい…」
黒田の後ろに膝をついて座ると、博多も悔しそうに頭を下げて謝る。
「もう良い。あらかじめ忍ばせていた忍からも…六合の動きは聞かされていた。
そなたのせいばかりではない。
私も注意が足りなかった事で招いた失態」
手を振り、黒田は博多に言うと目を瞑る。
「けど…一度目を付けられた以上…吉宗様は本格的に狙われるのは必死ですばい。
…隠密や來派だけじゃ…吉宗様を守りきるのも難しいたい…」
顔を上げると、難しい表情で博多は黒田に進言する。
「既に手は打ってある。酒場に潜入させている藤堂、大谷、真田を動かす。
…私の命令は聞かぬが、信之と秀吉の命令ならば…幸村も聞くであろう。
真田十勇士を総動員し、内部から笠間城を崩す」
淡々とした口調で黒田は博多に答えた。
「…流石は御隠居様ばい…」
感心して博多は目を輝かせる。
「軍師足るもの、常に先を見越していないと戦に負けてしまう。
敗北とは…軍師にとって一番屈辱的な事だ。
それ故に…かつて、私は大きな過ちを犯し友と姫を同時に失った経験がある」
背を向けたまま黒田は博多に言う。
「…」
黙って博多は黒田の話に聞き入る。
「皮肉な事だが…人は失態から学ぶ事も出来る。
山賊の件は半兵衛と島、石田に一任したから良しとして…問題はこの街だ。
…私の策で乱れ、混乱が生じた笠間城を我々だけで包囲し、速やかにこれを殲滅する。
が、万が一にも備えるに越した事は無い。
お前達は吉宗様と共に協力して…民を街から避難させよ」
振り返った黒田は、博多を見据え命令した。
「承知しましたばいっ!」
やる気満々に博多は黒田に返事をした。
…轟音と共に燃え行く境内。
…お前の心も…生前のあの日…冷静さを無くした瞬間から…
崩れ落ちる境内の建物と共に崩れたのか?
黒田は…泣きそうな表情で今は居ない半兵衛に心の中で問い掛けた。
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