第六十八話新撰組と花魁と源氏と次郎さん

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「…総司…てめえ誰に刀を向けて居やがる?」 スクッと土方は立ち上がると… 堀川と兼定は避け、自然と沖田と土方は向かい合う。 「目の前の腰抜けに言ってんだけど?」 笑って沖田は答えた。 「確かに…愛奈に何かあったかも知れねぇが…ガタガタ俺達が騒いだ所で仕方無ぇだろう」 面倒臭そうに、土方は頭を掻くと… 「俺達も行くぞ。様子を見るだけだ…」 諦めたように言って、土方は沖田を押し退け歩き出した。 「…了解」 笑って沖田は打刀を鞘に納めた。 「…つまらないな…」 「…チャンス生かせなかった」 残念そうに加州と安定も打刀を鞘に納める。 「歳さんっ!」 「待ってくださいっ!」 慌て兼定と堀川は土方を追い掛ける。 ニコニコ笑って沖田は土方に駆け寄り、隣を何事もなかったかのように歩き… 加州と安定も沖田の後ろを歩く。 「…へ?あれ?」 「どうなってんだ?」 取り残された平助と兼重はびっくりして目を丸くする。 「…総司は本気じゃなかった。加州と安定もな…。 副長をわざと動かすために…猿芝居をしたのだ」 斎藤は立ち上がると、平助に言って歩き出す。 「…わざと?あの総司が?」 びっくりして平助は目が真ん丸になり、慌て立ち上がり斎藤の隣を歩く。 「あの二人は相思相愛だ。刃傷沙汰にはならないと踏んでいた。 …同じ刀剣でも加州と安定は分からんが…だから主と俺は静観していた」 斎藤の後ろを国重も歩き出し… 「成程…しかし…あの総司がね…」 意外な沖田の一面を見て兼重は苦笑して国重の隣を歩くのだった。 「…総司、てめえわざとだろ?つまらねぇ芝居なんかしやがって…」 眉間に皺を寄せ土方は沖田に文句を言う。 「酷いな…中々に鬼気迫る迫真の演技だと思ったのに…」 笑って沖田はわざと泣きそうな顔をする。 「…二人の場合は…あれ演技だったの?」 苦笑して堀川は二人に問い掛ける。 「そうね。強いて言うなら半分半分かな…」 暢気そうに加州は堀川に答えた。 「半分半分って…半分本気じゃんか…」 蒼白になり、兼定はドン引きする。 「斬られるのがなんぼな…僕達新撰組でしょ? まぁ…二人を折って…沖田君を副長にして…僕達は副長の刀剣になるってのも美味しいかなってさ」 笑って安定は二人に答えた。
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