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人払いをさせた部屋で、夜な夜な密談が行われ…
寝室で一度長政様を問い詰めたら、怖い顔をされ妾には関係無いと言われた。
それ以降、妾は口出しできず…
『姫様、ご存じ無かったのですか?…今から浅井軍は…織田軍を裏切り…金ヶ崎で朝倉軍と挟撃するのですぞ…』
あの日、初めて海北殿から聞いて知った。
寝耳に水…とはまさにこの事だった。
だから私は…海北殿に兄上の秘密を話した上で頼んだ。
しかし、私は長政様に子供達と引き離され牢屋に幽閉された。
でも、金ヶ崎から戻って来た海北殿から兄上の事を聞いて…
急所を外して撃ったから大丈夫だと聞かされ安心した。
…けど妾は長政様から信頼を失い、長政様に会うたびに折檻を受け…この身体は痣だらけになり食事も取ることが出来ず辛かった。
海北殿が目を盗んでは、隙を見て食事を届けてくれた。
小谷城落城の日…長政様を説得してくれた海北殿は…
妾と子供達を逃がしてくれたのだ。
「今でも覚えているよ。あの時の長政様は豹変して怖かったけど…最期だけは私が愛した人だった」
悲し気な表情で愛奈は話した。
「あの長政が…市様を…折檻…」
衝撃的な真実を聞いて光忠は目を見開く。
『…許せねぇ…海北さんはイイ人だけど長政は許せねぇ…』
首に巻かれながら盛親も牙を剥き出しにする。
『正室を折檻など…』
『許せません』
親忠と信親も眉間に皺を寄せる。
「そう怒らないで。あの時の長政様は長政様でも何か別人の感じだった。
私を幽閉し、折檻した記憶など抜け落ちていたかのような…そんな妙な様子だったんだよ」
苦笑いして愛奈は教えた。
「姫様もお人が悪い。ペラペラと長政様の話をなさいますな」
「ぬおっ!」
後ろから声がして、愛奈は振り返ると無月が居た。
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