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「蛇足して置くが、あの頃の長政様は神子田と申す羽柴秀吉の軍師と内々に密談されるようになってから…御様子が一変なされたのだ。
生前も危惧していたが…恐らく神子田に暗示でも掛けられたのかと…」
真剣な表情で無月は過去を振り返りながら話す。
「…暗示…?要するように催眠術とか、マインドコントロール見たいな?」
眉間に皺を寄せ、光忠は無月に尋ねる。
「そんな感じかのう…姫様に仕出かした仕打ちも断片的にしか覚えていない。
しかし、竹中半兵衛には内密にして欲しい。
姫様と長政様の事を知れば…奴は益々正気を失うだろうからな…」
真摯に事実を受け止めながら、愛奈達を見回して頼む。
……死んで数年後、紅蓮の火に燃え盛る本能寺で……
……この場に居ない筈の奴は居た。
主君を討ち泣き叫ぶ明智光秀の傍らで確かにそれは居た。
…まだ妾が刀剣と同化せず、諸国をさ迷っていた時だった。
「あの者もまた…市様を愛する気持ちが暴走した末に間違いを起こした。
…恐らく長政様も…神子田に市様を想う気持ちに付け入り暗示を掛けたのだろう。
遠からず…長政様と奴も…己の過ちに気付く筈…
そうなった時は姫様…二人を支えて貰えぬか?」
真っ直ぐ見据え、無月は愛奈に頼む。
「海北殿……分かりました。今の私は馬鹿で元気が取り柄なだけだけど…頑張る!」
ヤル気満々に愛奈は無月に答えた。
「そう言って頂けると助かる」
安堵して無月は微笑む。
「…愛奈が頑張るなら…僕も頑張らないとね。
でも…この話は信頼が置ける刀剣に話でも大丈夫かい?」
無月を見詰め、光忠は苦笑して尋ねる。
「内密にして頂けるなら構わぬ」
無月は光忠に頷いた。
『仕方無ぇな』
『…僕達も秘密にします』
『愛奈様のお望みなら守るまでです』
盛親、親忠、信親も顔を見合せ頷いた。
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